思い出

過去は変えられる

2023-03-20

過去は変えられる

「未来を変えることは出来るけど、過去を変えることは出来ない」。一般的にこのことは揺るぎない事実のように思われていますし、私自身もそれを受け入れて生きていました。しかし今から30年ほど前、外資系企業で女性管理職になってから56年経ち40代前半差し掛かった頃に、尊敬していた上司からこんなことを言われました。

「過去は変えられる」

過去は変えることが出来ないと思い込んで生きていた当時の私にとってはすぐに理解することが出来ない言葉でした。その後上司との対話を続けていくうちに、自分自身の経験と重ね合わせることによって、その言葉が意味するところを理解出来るようになりました。

今回は「過去は変えられる」ことを理解するのに大きく役立った私の体験を紹介しつつ、読者の方にもその言葉の意味が伝わるような内容になればと思います。

お笑い芸人のキングコング西野氏が3年前に近畿大学の卒業式で行ったスピーチも同じテーマだったので、ご興味がある方はこちらもご覧になって頂くと、さらに理解が深まるかもしれません。

大学受験に失敗し、短大に進学したという過去

私には大学受験に失敗し、浪人することを許さなかった母の言う通りに短大に進んだという過去があります。このことは「学歴コンプレックス」という、私が人生の中で抱えた劣等感の中でもかなり重たいものを生み出す原因になりました。大学に進学した人には負けたくないと、短大卒業までにタイプや英文速記を勉強し、卒業後はFairchild Semiconductorという外資系企業で秘書として働き、中学生の頃から勉強を続けていた英語を活かすことが出来る仕事環境を手に入れることが出来たにも関わらず、学歴の劣等感を拭い去ることは出来ませんでした。これは華々しい学歴の人たちと肩を並べるようになった管理職に就いてからも付きまとうものでした。

そんな最中、前述の通りに尊敬する上司から「過去は変えられる」という話を聞き、自分の人生を振り返った時に気づいたのです。仕事を認められ40代で女性として管理職に就くまで遮二無二働くことを可能にしてくれた原動力は、まぎれもなく大学受験に失敗した過去だったのです。社会人として働き始めてから20年ずっと抱え続けてきた「大学受験に失敗しなければ……」という忸怩たる思いこそが、私を20年間働かせてくれたものだったのです。そのことに気づいた時に、自分の中で灰色がかった記憶だった「大学受験失敗」という過去が、色鮮やかで尊い過去に変わったのです。「大学受験を失敗した」という事実は何一つ変わることはありませんが、その事実がその後自分に何をもたらしたかを客観的に捉え、ネガティブどころかかなりポジティブな出来事だったと再定義すること、それが「過去は変えられる」ということです。

まとめ

今日の出来事も明日になれば過去になります。過去の失敗や成功の積み重ねの先に明日という未来があります。辛いことや悲しいことの真っ只中にいる時にはなかなか気づくことが出来ませんが、時間が経ってから振り返った時に、それらの経験をポジティブに捉えることが出来るようになったらいいなと思います。ある過去の出来事に対して、「あのことがあったからこそ今がある」と思うのか「あのことさえなければ今頃こうだったのにな」と思うのかによって、過去がもつ意味は大きく変わってきます。同じ過去でも考え方次第で変えられるのです。過去を変える選択をするのはあなたです