日常

親の相続問題の“肝“とは?

2024-01-09

親の相続問題の“肝“とは?

最近「相続問題」についての記事や講演会が目に付くようになったように思います。元旦の日経新聞でも「相続の準備、今できることを」という、相続についての特集記事が掲載されていました。それほど多くの人にとって「相続」が関心事になっているのだと思います。かくいう私も8年前の9月に父(95歳)を、一昨年の11月に母(98歳)を亡くしたため、それに伴う相続問題には向き合わざるを得ませんでした。

今回、その相続問題がようやく終結に至りましたので、その経験から学んだものを是非皆さんに共有したいと思い、今回ブロブにいたしました。今現在悩まれている方、もしくはこれから問題に直面するかもしれない方にとって、少しでも私の体験談がヒントになればと思います。

なお、今回は税金関係、生前贈与や手続きに関するhow-toの共有ではなく、そうしたテクニカルなこと以外の、相続問題に向き合うにあたって大切な肝となる部分について書き留めておきたいと思います。

私の家族の居住地について

私の家族、両親と兄弟3人(兄、私、妹)はみな北九州出身ですが、父の転勤で何度かの引っ越しを経て、最終的に実家は東京になりました。私と妹はそれぞれ結婚した後も東京に住み続けましたが、転勤が多かった兄は最終的には九州に住みたいと言い、15年くらい前に東京を離れてしまいました。両親は兄が東京の実家の近くに住んでくれると思っていたので、兄が東京を離れたことはとても寂しかったと思います。

父の相続問題

母が認知症を発症し父の負担が大きくなってしまったため、実家の近所に住んでいた夫を亡くした妹に実家を明渡し、両親揃って介護付き有料老人ホームに移ってもらいました。11年前の事です。その3年後に父は亡くなってしまいましたが、亡くなる前に父は「すべての財産管理を私に託す」という公正証書遺言を残しました。しかしこの公正証書遺言の作成にあたって、父は兄に自分の意思や考えを伝えていませんでした。そのため兄は私が父の相続人となり財産管理をすることに猛反対しました。その時はなんとか兄の気持ちを収めようと私が譲歩するかたちを取り、兄が作成した「今回はすべての財産を母の名義にし、母が亡くなった時は父の遺言通り、私が相続人となる」という念書に兄弟で署名捺印をすることになりました(母は認知症のため署名捺印は省略)。

すぐさま父の望んだ通りになるわけではありませんでしたが、最終的にはそうなる内容だったため安心してしまったせいか、ここで私は大きなミスを犯してしまいました。この念書を公正証書として公証役場に登録しなかったのです。次の章で書きますが、このミスのせいで母が亡くなった際の相続問題が大きくなってしまいました。当時はそんなことが将来起こることなど考えてもいませんでした。

母の相続問題

一昨年の11月に母が亡くなった時、8年前にみなで署名捺印した念書があるので、自動的にその通りになるものとばかり思っていましたが、念のため、賃貸物件として貸し出している実家の2階のワンルーム4部屋の収入や母の遺族年金、実家の管理にかかった費用(私の持ち出し)、父の生前から老人ホームに入居した当時の収支データなどすべてのデータをまとめて兄と妹にメールで送りました。すると兄から「あの時の念書には法的根拠がない」と言われ、挙句の果てにはみんながハッピーになるようにと両親に老人ホームに移ってもらったことも、私が勝手に決めたと言われてしまったのです。ここで老人ホーム入居の際に父が兄に自分の意思を伝えていなかったのだと気づきました。

そうだとしても、父の遺志に関わるものですし、兄が自分で作成した念書を反故にすることでもあったので、さすがに今回は譲歩出来ないと思ったものの、自分が育った環境による影響や、日本社会の家族の有り方についての考えなど、無意識に染み付いてしまっている社会的洗脳のようなものに囚われてしまい、真正面から兄と争うという決意を持つことが出来ませんでした。

そこでこれ以上兄と言い争いをすることは避けた方が良いと思い、知り合いの弁護士先生に依頼して以後一切兄と直接メールのやり取りをせずに相続問題を収めることにしました。そして、色々な経緯もありつつ、最終的には両親の想いを酌んだ形で、妹が相続人になることを兄が承諾し、我が家の相続問題は終結しました。

自分の兄が兄弟から孤立してしまい、結局いつ亡くなったかもわからずじまいだったことを悔いていた母は、認知症になってからも常に「兄弟仲良くね」と言っていました。私たち兄弟には自分と同じ轍を踏まないようにと願っていたからこその言葉だと思いますが、残念ながら母が望んだ通りにすることは難しかったです。

まとめ

両親のそれぞれの相続問題で色々なことを感じ学びました。我が家は、私が夫の海外転勤で日本に居ない期間が長かったこともあり、兄弟家族がお正月に実家に必ず集まるような習慣がありませんでした。両親が元気なうちにそのような場に法定相続人の兄弟3人が集まり、両親から相続についての意向を聴く機会を持っていたならば、これほどこじれた相続問題を経験しなくてよかったのにと思いました。これから相続問題に直面される方々は、是非早めに準備をスタートすることをお勧めします。